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2020.3.13

【特別企画】中江有里さんインタビュー ~本を読むことは、旅そのもの~

【特別企画】中江有里さんインタビュー ~本を読むことは、旅そのもの~
女優として、そして作家として活躍する中江有里さん。彼女が体験を通じて感じる、旅と読書の素敵な関係とは。日本の文豪たちが生活を送り、多くの作品を生み出した場所、文京区小石川で、旅と読書についてのお話を聞きました。 (取材・撮影場所:小石川後楽園)

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小石川後楽園・涵徳亭にて

■本日の撮影場所は文京区の小石川後楽園です。ここ小石川、そして東京大学のある本郷など、文京区は古くから文人とのゆかりの強い町ですが、この地域と関係する作家さんでお好きな方、及び作品はありますか?

中江さん:
東京大学が舞台となった夏目漱石さんの『三四郎』、そして短い生涯の約半生を文京区で過ごした樋口一葉さんの『にごりえ』ですね。樋口一葉さんは彼女の生き方に惹かれ自身について書かれた本もよく読みました。中でも、佐伯順子さんの『一葉語録』は、作品に書かれた言葉についてわかりやすく解説されており、一葉入門編としてお薦めです。
■『三四郎』について惹かれるところは?

中江さん:主人公の三四郎が、熊本から大学に入るために上京してくるのですが、私も大阪出身で、高校一年の時に東京に来た経緯があります。『三四郎』を読むと、上京してきた頃を思い出し、彼の思いに自身を重ね合わせてしまうところがあって愛読するようになりました。

■ちなみに文京区のなかでよく訪れる場所はありますか?

中江さん:
千駄木にある森鴎外記念館によく行きます。記念館が建つ場所は、鴎外の旧居「観潮楼(かんちょうろう)」の跡地で、観潮楼正門の門柱跡や敷石、三人冗語の石などがあり、それらを眺めながらぼんやり過ごすのが好きですね。
■文京区や近隣についてはどのようなイメージをお持ちですか?

中江さん:
やはり文豪達の街という印象です。そして、観潮楼で行われた鴎外主催の歌会には、石川啄木、斎藤茂吉、北原白秋、樋口一葉、伊藤左千夫など、蒼々たる文豪達が吸い寄せられるように集まっていました。また、鴎外が借りていた千駄木の家には、後に漱石が住んでいたそうですね。このように文京区は、一人の作家のもとに様々な文化人たちが導かれてきた街。面白い現象ですよね。彼らを魅了する何かがこの界隈にあるのかもしれません。その時代にタイムスリップして、どんな様子だったのか覗いてみたくなりますね。

小石川後楽園のシダレザクラ。樹齢60年以上といわれる

■なるほど。ではここから本題となりますが、中江さんは旅先でよく読書をされますか?

中江さん:
ええ。日常でも旅先でも本はよく読みます。特に旅行に行く時は、上下巻などボリュームがある本を持っていきますね。足りなくなるのが嫌なので。
■旅行中は主に、どんな場所、どんな時に本を読まれるのですか?

中江さん:
旅に出ると日常の喧騒を離れ、のんびりできるひとときが訪れます。そんな時に本の世界に浸るのが好きですね。もちろん列車、バス、そして空港でトランジットしているときなど、旅先での移動中にも読書しますよ。

中江有里さんが旅のお供に携えたい5冊

小石川後楽園シダレザクラとともに

■今回、旅先で読みたい本として5冊をセレクトして頂きましたが、全ての本を持ってきてくださったんですね。重かったのでは? ありがとうございます。

中江さん:
ええ、正直言うと重かった・・・(笑)。でもぜひ皆さんにお見せしたくて。今回は、吉田修一著『橋を渡る』、ジョディ・ピコ―著『わたしの中のあなた』、佐藤正午著『鳩の撃退法』、トーン・テレヘン著『ハリネズミの願い』、村上春樹著『雑文集』の5冊を選んできました。
■では、まず『橋を渡る』から。中江さんが特にお好きな箇所、読みどころを教えて頂けますか?

中江さん:
『橋を渡る』は、前半では近年、現実に起きた事を想起させる物語が描かれています。そして後半は2085年の近未来、新しい生命体が登場し、今の私たちの社会とはうって変わった世界に導かれていきます。そこは、現実には絶対ありえない小説だけの世界と誰もが思うはずなのですが、でも今としっかりと繋がっていて未来におこり得るかも、と感じずにはいられない。そんなところが、印象深かったですね。

小石川後楽園の通天橋(つうてんきょう)。京都・東福寺の通天橋を模倣したといわれる

■なるほど。次に『私の中のあなた』ついてお聞かせください。

中江さん:
『私の中のあなた』は、遺伝子操作でデザイナーベイビーが作られる話です。こちらも今、現実に起こるのでは?と思わせられる話でしたが、感動的でもありました。涙が止まりませんでした。
■ではこの2冊を旅先で読む本として挙げた理由は?

中江さん:
2冊ともパラレルワールドを感じさせるものですね。読んでいるうちに、今の私たちの世界と並行して存在する別の世界(時空)に旅をしているような気分にさせられる。でも、今の現実としっかり繋がっている…それって旅にも通じる気がするんです。時間とお金を使って本を読むことと時間とお金を使って旅をすることは同じような。本を読んでいると、例えば『橋を渡る』の新しい生命体や『私の中のあなた』のデザイナーベイビーが作られる近未来の世界に導かれるように、旅では、列車、飛行機などに乗って出発し、到着するその先には日常とは異なる別世界が待っている。そこでは、時間、空気、匂い、自身の五感さえも変化することがありますよね。ほら、日本だったら絶対口にしないだろう食べ物も、海外では意外に美味しいじゃない、なんてね。そして日常から離れているけど、どこかしらいつもの自分と繋がっている、そんな共通点から旅と相性がいい本として選びました。

■『ハリネズミの願い』は日本でもファンの方が多い本だと思いますが、こちらはどんなところがお好きですか?

中江さん:
この話は孤独がテーマなんです。主人公のハリネズミは体中にある"はり"のせいで他の動物とうまくつきあえない臆病者。ある日、誰かを家に招こうと招待状を書くのですが、最後に「やっぱり来なくていいです」と書いてしまいます(笑)。そんな、あまのじゃくな態度は、私にも覚えがあります。一人でいることが好きですが、でも時々どうしようもなく寂しい気持ちになる時がある。だから本を読んでいるのかもしれません。寂しさを忘れられるんですね。本って孤独じゃないと読めないもの。映画やテレビみたいに誰かと一緒に視ることはできません。孤独は本を読む必須条件なんですね。旅も孤独になる場所かもしれません。一人旅の場合ですが、旅先だと素直に孤独を受け入れられる。楽しむしかないってね。
■『鳩の撃退法』はいかがですか?

中江さん:
こちらはミステリーです。佐藤正午さんの小説はどれも気に入っています。日常に起きる誰もが見過ごすような些細な出来事に焦点をあて、思いもよらぬ展開が起きる。そんな佐藤さんの着眼点に惹かれます。旅でも、一つひとつの何でもない出来事が印象に残ったり新鮮だったりしますよね。トラブルさえもいい思い出になったりする。そんなところから「旅先に読みたい本」と考えました。

村上春樹氏のフレーズから蘇った、中江さんの旅の記憶

小石川後楽園の丸屋(まろや)。茶屋の佇まいをあらわしている

■では最後に村上春樹さんの『雑文集』についてお薦めのポイントを教えてください。

中江さん:
こちらは未発表の文章が集められたモノ。中でも、村上さん自身がこれまで書き上げた小説について深く触れている点に興味を持ちました。小説そのものを村上さんがどのように想われているか? 印象深かったのは、

「自分の内側にあるいくつかの未知の場所を探索できた。」(村上春樹、『雑文集』新潮社、2015年、88頁)

というコメントでした。
■村上さんの本を旅先で読みたい本に選んだのは?

中江さん:
日本人の作品でありながら、読んでいるとどこの国の物語なのかわからない・・・。読み進めていくうちに、私はどこにいるんだろう? とハッとさせられることがあるんです。そんな感覚は旅に出たときに似ている。どこか知らない国に訪れたときのとまどいや未知との遭遇に。また、村上さんは多くの海外の作品を翻訳していますが、この『雑文集』の中で翻訳についてこう語っています。

「すぐれた翻訳にいちばん必要とされるものは言うまでもなく語学力だけれど、それに劣らず、――とりわけフィクションの場合――必要なのは個人的な偏見に満ちた愛ではないかと思う。」(村上春樹、『雑文集』新潮社、2015年、284頁)。
このフレーズを読んだときにある旅の記憶が蘇りました。飛行機の中でたまたま隣に座った方、ドイツ人だったと思いますが、彼が話しかけてきたんです。私も得意ではない英語で、単語を並べただけの会話に身振り手振りを交えながら一生懸命話していたのですが、意外にきちんと通じているんです。1時間も話が続きました。今、思えば「言葉よりも伝えたいという気持ちが通じ合っていた」のかも。まさに「偏見に満ちた愛」という気がします。もしかして、自分の一方的な思い込みで相手の言葉を解釈していたかもしれません。でも、互いに相手のことを一生懸命理解しようという思いに溢れた時間がそこには流れていたはず。このように文章一つ読むだけで、忘れていた記憶が蘇ったり「私もこんなことがあったな」とシンパシーを感じたりする、本にはそんな効力があるんですよね。

■旅をすることと本を読むことは、似通っている。その点について、もう少し詳しくお話いただけますか?

中江さん:
人には自分と違う世界を覗き見たいという欲求があるんですよね。だから、旅をしたり本を読んだりするのではないでしょうか。本を読んでいると、他者の人生を辿るうちに、村上さんのコメントのように自分の未知なるところを探さずにいられなくなったり、奥底に眠っていた記憶が蘇ったりする。今まで考えもつかなかった発想がいきなり浮かんだり、全く興味のなかったことに惹かれたり、自分はこんな事が好きだったんだ、ということに気づかされたりします。旅でも同じような経験がありませんか?だから「本を読むことは、旅のようなもの」と私は思うのです。

【あらすじ】

小石川後楽園の内庭。純日本式の庭園で水戸藩邸の書院の庭があったところ

■吉田修一著『橋を渡る』
主人公は会社員、都議会議員の妻、報道局のディレクターの3人。不倫、裏切り、セクハラ、新聞の誤報、海外にあったデモなど、2014年に実際に起きた事件も描かれ、後に2085年の近未来が登場。そこで待っていたのはおぞましい現実だった。

■ジョディ・ピコ―著『わたしの中のあなた』
1歳のアナは、白血病の姉ケイトのために生まれたデザイナーベイビー。姉ケイトの命を守るため両親はアナに骨髄移植などの提供を強いてきた。そして、ついに腎臓移植をしようと決意。だがアナは拒絶。弁護士を雇い両親相手に訴訟を起こすが・・・。家族の絆を問う感動ストーリー。
■佐藤正午著『鳩の撃退法』
売れっ子作家・津田伸一は、とある地方都市に流れ着き、風俗店の送迎ドライバーとして働き出す。ある日、親しくしていた古書店店主から形見のキャリーバッグが届き、開けてみると数冊の絵本と古本のピーターパン、三千万円を超える現金が詰め込まれていた。それは偽札と発覚、さらに家族三人の失踪・・・。さまざまな事件が絡む中、裏社会の"あのひと"も動き出す。

■トーン・テレヘン著『ハリネズミの願い』
自分のハリが大嫌いでつきあいの苦手なハリネズミ。でも誰かを求めずにはいられない彼は、ある日誰かを招待しようと思いつく。さっそく招待状を書き始めるが最後に「でも来なくていいです」と書いてしまう。孤独とは?友だちとは?彼の心の中に自分自身を見つける人も多いはず。

■村上春樹著『雑文集』
エルサレム賞スピーチ「壁と卵」。『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』ロシア語版序文。『ライ麦畑でつかまえて』翻訳について。ジャズ、友人、小説について。二つの未発表超短編小説など。小説や翻訳に対する考え方、思いなども紹介された、村上春樹氏の新たな表情が読み取れる一冊。
取材・文:伊東りりこ
編集:山葉のぶゆき(effect)
撮影:渡部孝弘
取材協力:小石川後楽園
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