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2017.10.25

【福島旅行記】会津奥座敷、東山温泉で老舗旅館に憩う

【福島旅行記】会津奥座敷、東山温泉で老舗旅館に憩う
会津若松市の中心地から車でおよそ10分。山深き渓谷に広がる会津東山温泉は、約1300年前の奈良時代に、名僧・行基が発見したという逸話の残る温泉街。山形県の上山温泉、湯野浜温泉と並び、「奥羽三楽郷」のひとつにも数えられています。文人の竹久夢二や与謝野晶子も愛した趣ある温泉街で、今宵は歴史と伝統が息づく老舗旅館、会津東山温泉「向瀧(むかいたき)」で極上の時間を過ごします。

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新選組・土方歳三が戊辰戦争での傷を癒した、会津東山温泉の湯

会津東山温泉・旅館案内所

湯川沿いに20軒ほどの温泉宿が立ち並ぶ会津東山温泉。全国的に温泉郷があるのは郊外や山深き渓谷が多く、市街地から約10分で行ける場所に温泉街があるのは、とても珍しいこと。泉質は硫酸塩泉で、掌で掬い上げれば指の間からさらさらと零れ落ちる、絹の如くの感触。神経痛やリウマチ性疾患、皮膚病に効能がある良泉です。

くつろぎ宿 新滝「外壁に描かれた土方歳三」

幕末の戊辰戦争(慶応4年/明治元年<1868年>~明治2年<1869年>)では、白虎隊や新選組の土方歳三も湯治に訪れ、戦での傷を癒したとされる名湯。旅館「くつろぎ宿新滝」の外壁には土方のことを偲び、写真からおこした絵が描かれています。

会津東山温泉・東山四大滝のひとつ「順階滝(向瀧)」

会津東山温泉の見どころのひとつ「東山四大滝」。「順階滝(向瀧)」「原滝」「伏見ヶ滝」「雨降り滝」で、「原滝」は會津藩校だった日新館に通う藩士の子息たちの水練場だったところ。「順階滝」が現在「向瀧」とされているのは、向かい合うように流れるこの滝が、東山温泉随一の老舗「向瀧」の横にあるからといわれています。

会津藩指定保養所の歴史を引き継ぐ、向瀧

永観橋と向瀧

湯川に架かる永観橋の袂に建つのが、赤瓦葺入母屋根木造(あかがわらふきいりもやねもくぞう)二階建ての向瀧。傾斜地に建てられた連続棟が印象的で、作家・浅田次郎が宿泊した際に、「地形を活かして、山の斜面に龍が昇るような形」と、称した景観が実に見事です。

向瀧・玄関前

宿の歴史は江戸時代の中期からで、会津藩指定保養所でもあったと記述が残っています。24室ある客室はすべて異なるという、職人の技が随所に見られる芸術的建築美。登録文化財制度が制定された平成8年(1996年)、記念すべき登録有形文化財第一号物件として認められたほどです。

湯川と向瀧

部屋は大きく分けて3つのタイプがあり、多くの皇族や政府要人を迎えてきた宮内庁指定棟の特別室「はなれの間」と、湯川のせせらぎを楽しめる川向き、斜面に広がる手入れがいき届いた日本庭園の中庭向きがあります。本日宿泊するのは、はなれの間の隣下にある中庭に面した「南天の間」です。

サミットの代表も寛いだ「南天の間」で過ごす贅沢時間

向瀧のお部屋「南天の間」

南天の間は本間が13.5畳と一番広い客室。平成4年(1992年)に裏磐梯で開催された「四極通商サミット」のプライベート晩餐会では、各国の代表が控え室として利用した部屋です。折よく中庭では満開の桜が咲き誇り、夜桜見学も楽しまれたといいます。

向瀧・中庭の日本庭園

訪れた9月の終わりはまだ紅葉には早く、夏の終焉にもわずかに日がある時期。部屋から眺める中庭は緑濃く、山間からは時折行く夏を惜しむかのような蝉の声が聞こえてきます。

向瀧のお部屋「南天の間・本間」

訪れた人に都会の喧騒を忘れ、ゆるりと時を過ごして欲しいという想いから、旅館やホテルで完備している室内冷蔵庫はありません。多くの旅人が湯治を目的としてこの地を訪れたように静かな時の流れに身をまかせ、温泉三昧という贅沢で至福な時間が味わえるのです。

建築美に彩られた館内散策、そして湯へ

向瀧・中庭を望む渡り廊下

中庭を眺めながらの回廊は、数寄屋造りの特徴でもある木目の美しさが見てとれます。割れや節目のない良質の木材に一本杉の軒桁。日本建築に造詣の深い人ならば、館内の散策でも思わず足をとめ、見惚れてしまう職人の技巧が随所に溢れていることに気づかされるはずです。

向瀧「二階・大広間」

向瀧の玄関二階にある大広間こそ、建築美に満ちた空間はありません。木を組み格子状にした「格天井(ごうてんじょう)」は、寺院や城で使用するほどの格式高い天井様式。使われている会津桐の柾目一枚板は巨木から取れたもので、今ではこれほどのものは生育していないため、この先再現は不可能といわれています。

向瀧の浴場「さるの湯」

向瀧には様々なかけ流し温泉があります。ひとつは窓の外、会津東山温泉の渓谷が広がる解放感に満ちた「さるの湯」。ややぬるめなので、滝の音を聞きながらゆったり湯時間を楽しめます。熱い風呂が好きならば、自家源泉が芯から身体を温めてくれる「きつね湯」がおすすめ。また家族向けには3つの無料貸切風呂もあります。

会津藩家老名物の夕食、歴史浪漫薫る一杯の珈琲

向瀧の夕食「秋の献立・全16品」

向瀧の夕朝食はすべての客室が部屋食なのも魅力。使う食材はどれも会津の里山で採れた自然の恵。この日の夕食は『秋の献立』で、漆椀で出される会津藩家老・田中玄宰直伝、「鯉の甘煮」を含めた全16品。なかでも向瀧社長考案の新作「秋山河 鯉月見」の、鯉をユッケにした逸品が実に滋味深く、まろやかで美味でした。

進駐軍MBブレンド~向瀧オリジナル焙煎~

翌朝頂いたのが、もうひとつの名物『進駐軍MBブレンド~向瀧オリジナル焙煎~』。パーコレーターで煮出す珍しい珈琲で、昭和20年(1945年)に進駐軍ニューヨーク部隊、マルコム・ボルドリッチ将校(後のアメリカ商務長官)が向瀧に滞在した際、伝えたもの。出来たては香り高く、時の経過でコク深くなるのが特徴です。

館内『小さな売店』

売店でお土産を買うなら向瀧限定、山廃仕込純米酒『美酒佳肴』をたっぷりと染み込ませ、十分に熟成させた「酒けーき」。しっとりした口当たりとほどよい甘さが、まさに大人のケーキそのもの。日本酒を使用しているため、ぬる燗程度の温かさで食するほど味わいが深まります。抱えきれない思い出を手に、次回は中庭を約100本の雪見ろうそくが彩る冬に訪れようと心に誓った旅でした。

※【雪見ろうそく】2017年12月23日(土)~2018年2月28日(水)開催
取材・撮影・文:井田 久恵
取材時期:2017年9月下旬
取材協力:向瀧

【会津東山温泉 向瀧】公式HP

【会津東山温泉 向瀧】公式HP
福島 会津若松・東山温泉の人気隠れ家 国登録文化財のレトロな正統派老舗旅館
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